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『パラサイト 半地下の家族』感想・考察

『パラサイト 半地下の家族』感想・考察

映画『パラサイト 半地下の家族』を観た。公開日が待ちきれず、TOHO日比谷に先行上映を観に行った。

本編が始まる前、ポン・ジュノ監督と主要キャストが出演するショートムービーが再生され、「観ていない人に、絶対にネタバレしないで!」と念を押された。

従って、この記事ではストーリーの核心部分のネタバレは避け、感想の一部を紹介したい。

あらすじ

半地下の家で暮らすキム一家。全員失業中で、ピザ屋から請け負った箱折りの内職をして、やっと食事にありつける……といった暮らしぶりだ。

そんな一家の長男ギウが、友人の紹介で家庭教師のアルバイトを引き受ける。とは言っても彼自身は学費が払えず大学に入学できなかったため、妹ギジョンに入学許可書を偽造してもらい、身分を偽って裕福な家庭に入り込むのだ。

ちょっとしたハッタリと演技によってパク一家の信頼を得た彼は、妹を二人目の家庭教師として送り込む。二人が実の兄妹ということは内緒だ。

こうして一家に入り込み、まんまと多額の報酬を稼ぎ出すことに成功した彼らは、さらに父母も担ぎ出して、パク一家に寄生しようと試みるのだった……。

感想・考察

気弱な青年ギウが、詐欺をはたらく場面になると急に雄弁になり、堂々とエリート大学生のフリをする二面性がおもしろい。
この方法で一時的にはうまくいったとしても、どこかで必ず綻びが生じるはずだ。リスクを考えず大胆に行動する彼の姿に、観ているこちらはハラハラしっぱなしだった。

私は、昨年、貧乏な黒人青年が裕福な家庭に運転手として雇われ、カルチャーギャップに引き裂かれる映画『ネイティブ・サン』を観た。ちなみにこの映画、結末はとんでもなく胸糞である。

映画『ネイティブ・サン~アメリカの息子~』ネタバレ・感想

どうせ『パラサイト 半地下の家族』も最後は破滅するんだろうと、不吉な予感を抱いて観たら、果たしてその通りだった……。

散らかった家でパジャマみたいな服装をしてダラーンとしていたキム家のお母さんもまた、髪を切り、こざっぱりしたセットアップを着てきびきび動けば、上品なマダムにしか見えない。(さすがは女優。)
お父さんが、こっそりお母さんのお尻を撫でたりして、この二人、貧しくても、夫婦仲は悪くなさそうなところが、ちょっとほほえましい。

逆に、金持ち夫婦の方には、なんとなく仮面夫婦の雰囲気がある。
例えば、奥さんが「こんなことが夫に知れたら、八つ裂きにされる!」と叫ぶシーン。
あるいは、貧乏なお父さんが金持ち父さんに「奥さんのこと、愛してるんでしょ?」と問いかけるシーンが二度ある。金持ち父さんは一度目は肯定するが、二度目ははっきりと答えない。
結局、この夫婦はお互いに体面を気にしていっしょになっているだけで、夫婦間の愛情は薄いのかもしれない。

また、金持ち家族はいつもバラバラで、いっしょに行動しない。家族が一か所に集まったのなんて、子どもの誕生日のキャンプに行くため、車に乗ったとき。一瞬だけだ。

一方、貧乏家族はいつもいっしょにいる。
金持ちの留守宅に全員集合しているときでさえ、あんなに広い家の中で、わざわざ四人一か所に集まって宴会をするのだ。(こうした、貧乏対金持ちの対比は随所に散りばめられている。)

このとき、貧乏母さんが金持ち母さんを評して、
「金持ちは純真で人を信じやすい。金は心のシワを伸ばすアイロンだよ!」と言い放つところが、この映画で最もおかしかった。

金持ちのパク社長は、貧乏人に対してどのような感情を持っているのか。象徴的なシーンがある。
長年働いていた家政婦を評して「あの家政婦は、分をわきまえているところが良かった」と言う。
字幕では《限度》と訳されていたように思うが、要するに「分をわきまえる」というのがこの物語のキーワードだ。

貧乏父さんについては「限度を超えそうになるけれども、ギリギリのところで超えない。そこがいい」とパク夫婦は評価している。
しかし、キム氏は全身に何らかのにおいが染み付いており、そこだけが気障りだった。
「あのにおいは限度を超えている」と主人は暗に揶揄して言う。
悪臭でもなければ「くさい」と言っているわけではない。「限度を超えたにおい」
その言い方が、いかにも金持ちらしく上品に婉曲で、残酷だ。訳した人も苦労したのではないだろうか……。
半地下の家では天井近くに靴下をぶら下げて干しているカットが何度も映るところから察するに、洗濯物の生乾き臭というか、その種のにおいだろう。

最終的には「分をわきまえた」貧乏人のフラストレーションが爆発して、物語は悲劇へと向かう。
皮肉とユーモア、緊張と弛緩。ハラハラしどおしで、サスペンス・スリラーとしても社会風刺劇としてもよくできている。
韓国では、あんなにも貧しい半地下の家があり得るのか……。と驚きを感じつつ、わが日本でも度重なる台風や洪水に見舞われ、低地で暮らす人々はおなじくらい惨めな目にあっているという現実もある。

2019年に観た映画の中で、個人的にはナンバーワン。かつ、2020年におすすめしたい劇場公開作品として、この作品を紹介したい。

ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。