外薗昌也先生の実話系怪談・異本シリーズ3作を読んだ。
この記事では、これまでに刊行されたマンガ版の中から『黒異本』を紹介したい。
目次
『黒異本』 原作:外薗昌也、作画:高港基資、2015年7月刊行、竹書房
『鬼畜島』で活躍中の漫画家・外薗先生の原作『黒異本』から、高港基資先生が全8話をマンガ化したものだ。
まがまがしい実話系怪談が、高港先生の卓越した演出と精緻な作画によってビジュアライズされている。
収録話
- 独居死
- 赤鬼
- 妹
- 2F
- ベビーカーの女たち
- 障り前編
- 障り後編
- 黒い団地
解説
『黒異本』というタイトルは忌み言葉の「黒不浄」からきている。「黒不浄」とは死の穢れ(けがれ)を表す言葉だ。
『独居死』はB団地で独居死したある青年の遺体にまつわる話。
『赤鬼』は、少年が友だちの家で《鬼》と出会った話。
『妹』は小学生の姉妹が《コックリさん》を行ったときの話。
『2F』は神奈川県にあるビルの改修工事で、住宅施工会社の男性が怪異に遭遇した話。
『ベビーカーの女たち』は白昼堂々路上で怪異の者に遭遇した話。
『障り』は《犬神》の呪術にまつわる話。
『黒い団地』は『独居死』に登場したB団地で起きた一連の怪事件について……。
『黒異本』は人の怨念や呪術にまつわる話が含まれており、軽々しく取り扱うことはできないため、内容については短い紹介に留めたい。
高港基資先生の作画の魅力
このシリーズは、なんといっても高港先生の作画・演出が凄い。
原作と比べて読んでみると、少しだけ脚色・演出を加えていることがわかる。短いページで話を盛り上げ、怪奇現象をより効果的にビジュアルで見せているのだ。
全体としてはコミカルで親しみが持てるような絵柄だが、恐怖シーンに差し掛かったときに、急にリアルな絵に変わるのが怖い。
特に、子どもや女性は可愛らしく描く一方で、怖いシーンになったときのギャップが大きく、突き刺さってくるようなおそろしさを感じる。
私のイチオシエピソード:『赤鬼』
【あらすじ】
小学生の「俺」は、友だちのウッチーの部屋で赤鬼と出会う。「わっ」と飛び起きると、それは夢だった。
その日から徐々にウッチーは全身が薄汚れ、異臭を放つようになっていった。しかし、クラスメートや周囲の大人たちはなぜかそのことに気づかない。最終的にはウッチーはゾンビのように崩れた姿になってしまった……。
『赤鬼』は、原作『黒異本』の中でも私が特にお気に入りのエピソードだ。
主人公の少年と親友・ウッチーの友情が関わる切ない怪談である。(原作では『黒い人 その三』に収録)
顔を真っ赤にした赤鬼とはなんだったのか。なぜ、ウッチーは日に日に崩れた姿になってしまったのか……。明かされる結末にびっくりする話となっている。
少年ウッチーが日に日に崩れた姿となり、平然と小学校に通うビジュアルが衝撃的だ。
冒頭ではいきなり登場する赤鬼の姿に驚き、わけがわからないままに崩れた姿のウッチーと共に小学校に通う前半のホラー展開、オチが明かされる後半部の衝撃も含めて、何度も驚かされる仕掛けになっている。
終わりに
『黒異本』は陰惨な話が多い。多少胸糞耐性がある人、ショッキングホラーを好む人に、ぜひおすすめしたい。
外薗昌也・高港基資のコンビによるシリーズは『黒異本』の他に、『赤異本』『白異本』と続いている。
最後の『白異本』は2019年3月現在も継続中で、WEBマンガの『ゴラクエッグ』にて最新話を無料で読むことができる。
『白異本』最新エピソードの「無料ためし読み」はこちらから→ゴラクエッグ