怪談

赤異本・黒異本・白異本【原作】をまとめて紹介する

赤異本・黒異本・白異本

外薗昌也(ほかぞの・まさや)先生の実話系怪談・異本シリーズ3作を読んだ。

  • 赤異本 2012年9月刊行、竹書房文庫
  • 黒異本 2013年7月刊行、廣済堂文庫
  • 白異本 2014年8月刊行、廣済堂文庫

それぞれ活字の本とコミックが出版されており、複数バージョンが存在するため、少し整理して紹介したい。

発端は平山夢明(ひらやま・ゆめあき)氏主催の『FKB』から。
外薗先生はこの中の幽戸玄太(かすかべ・げんた)著『厭霊ノ書(えんれいのしょ)』を読んでいたく気に入り、ブログで紹介したのが縁で、自らも『FKB』に参加することとなった。その後竹書房から「怪談の本を書きませんか?」と誘われ、書き下ろしたのが一作目の『赤異本』である。

これが好評で読者からも続々と新しい怪談が寄せられ、続編、また続編と次々に本を出すことになったらしい。
シリーズは途中で出版社を変え、文庫とKindleの両方で出版されている。(『白異本』だけは電子版がなく紙の本のみ。)
3作は相互につながりがあるため、通して読むことを勧めたい。

漫画家・外薗昌也自らの体験談

外薗先生は「心霊現象を信じない」と言いながらも度々「怪異」を経験している。

東京の専門学校に通っていた10代の頃。
田舎の両親がそれまで住んでいた家の近くに戸建てを買って引っ越した。その家で起こった一連の怪奇現象を書いた『僕の家』というエピソードが『赤異本』に収録されている。
さらに『黒異本』では後日談も。怪談トークライブで披露するため、追加で『僕の家』の話を母親から取材しようとすると、またしても異変が起きた。

「あの家のことは人に話さん方がいいよ」
外薗先生の母堂はそう言ったらしい。
引っ越して10数年が経つと言うが、時間も空間も超えて怪異は追ってくるものらしい。(『黒異本』より『僕の家・後日談①〜③』)

また、外薗先生が上京したての頃に体験した『赤い妹』のエピソードも有名だ。
ある夕方、妹を名乗る女がアパートのドアを叩いた。
不審に思った外薗先生が窓からのぞくと、その女は全身にペンキでも被ったかのように真っ赤だったという。

それから30年以上が経って、ふとこの話を思い出しアシスタントの青年に話して聞かせたところ、しばらくして青年は精神を病み、自宅に引きこもるようになってしまった。外薗先生が訪ねて行くと、青年は血便なのか赤く汚れた布団にくるまり、ぼーっとしていたそうだ。

『赤い妹』にまつわるエピソードは後日談も含めて、3冊目の『白異本』に収録されている。(『白異本』p122『赤い妹事件』)

取材協力者「黒い人」

外薗先生は招待制のSNSグループを主宰して怪談を収集しているそうだ。

そのグループに埼玉県で住宅施工会社を営む人物から体験談が寄せられ、この人を通じて紹介されたのが通称「黒い人」。ドアガードの交換工事などを手がける内装工の男性だ。
仕事の合間に経験した団地での怪談などを時々メールで送ってくれる。
「黒い人」の語り口がまたおもしろい。人を食ったような独特のユーモアがある。そしてずば抜けて闇が深い話をたくさん持っているのだ。

『黒異本』に収められている『団地 その後』『団地 その後のその後(笑)』『黒い人その一~四』は、全て「黒い人」から寄せられた体験談である。
『白異本』所収の『黒い人から……その一~八』も同じく。

私が最も印象的だったのは『黒い人 その三』と題された、彼の小学生時代のエピソード。(『黒異本』所収)
彼はクラスメートの家に遊びに行って殺人事件に巻き込まれているのだ。なんとも陰惨で悲しいこの話を読んで、外薗先生は涙したという。 子どもの頃にこんな体験をしたら、斜に構えてシニカルな目で世の中を見るようになるのも無理からぬことだろう。
「黒い人」の体験談は不条理でこわい話が多く、話としての完成度が高い。

ちなみに、マンガ版にも多数採用されていた。両者読み比べてみるのもおもしろい。

『赤異本』『黒異本』『白異本』タイトルの由来

シリーズのタイトルは、忌み言葉としての赤不浄、黒不浄、白不浄から来ている。
赤不浄は経血の穢れ、黒不浄は死の穢れ、そして白不浄は出産の穢れを意味するらしい。

これらのタイトルに呼応するように『赤異本』には経血にまつわる『腐女子』、黒異本には団地で出会った死者にまつわる『黒い人』、『白異本』には胎児にまつわるエピソード『黒い人から……その三』p291『その四』p301がそれぞれ収録されている。
外薗先生の手によって集めたというよりは、タイトルを決めた後でそれに応じた話が勝手に集まってきたそうだ。

表紙絵

シリーズの表紙イラストを担当しているのはマンガ家でイラストレーターの里見有先生。
まがまがしい雰囲気が出ていて、表紙を見るだけでこわい。

『黒異本』の表紙絵ができあがったときに「黒い人」に見せたら、カバー中央に描かれた白い顔の男性が『団地』というエピソードに関わっている人物とそっくりだったらしく、「黒い人」はゲラゲラ笑っていたという。(『黒異本』巻末特別対談より)

『黒異本』外薗昌也・著、2013年、廣済堂文庫『黒異本』外薗昌也・著、2013年、廣済堂文庫

私の感想

このシリーズは、外薗先生がどういう関係性の人から取材した話なのか。また、同じ人から聞いたエピソードがどれなのか、後日談は、というところまで関連性をつまびらかにして書かれているのが特徴だ。こうした事情を書くのには、実話であることを強調する効果があると思う。
おそらくミクシィのようなものだと思うが、会員制SNSで怪談を集めるというのも新しい。ネット上に怪談はあふれていて、話者が未熟だと断片的な話で終わってしまうところ、相互にやり取りして細部を聞き取りできるのは強みだろう。

また、外薗先生はあまり話を脚色せずに、なるべく聞いたままを出力しようとしているようだ。そこが生々しくておもしろい。
次の記事ではコミック版を読んだ感想を紹介したい。

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黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。