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マンガ

SM嬢が主役のちょっとエッチなホラー漫画『低俗霊DAYDREAM』

低俗霊DAYDREAM

漫画家・奥瀬サキを紹介しようとするとき、『低俗霊狩り』『コックリさんが通る』『火閻魔人』……さまざまなタイトルが思い浮かぶ。どれも紹介したいのだが、完結済みで紹介しやすいものを一つと言ったら、やっぱりこれかな。

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元祖『低俗霊狩り』のセルフ・オマージュといった体で、奥瀬先生は原作を担当している。(作画は目黒三吉。)

目次

あらすじ

『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p103より『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p103より
主人公はフリーランスの霊媒師・深小姫(みさき)。副業でSM女王をしている。
自殺や首吊りに絡んで霊障が起こると、東京都の「生活対策課」からの委託で、職員と共に現場に派遣され、この世に未練を残した死霊の声を代弁する。

毎回心霊現象以外に生身の人間が関わる事件が絡んで、佳境で1回は格闘シーンがある。

『低俗霊DAYDREAM』2巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p104より『低俗霊DAYDREAM』2巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p104より

陰惨な事件が多いが、人情味ある深小姫のキャラクターと、ギャグの掛け合いが全体のトーンを明るくしている。また、しばしばラッキースケベ的なお色気シーンが挟み込まれ、主人公のセクシーショットが多いのもお楽しみの一つとなっている。

1巻〜6巻まではほとんど1話完結の読み切り短編形式。7巻の後半〜10巻前半まで『ウェルテル』と題された長めのエピソードが続く。

自殺をテーマにしたこういう作品は、自主規制が厳しい今となっては少年誌では難しいのではないだろうか……。
2000年8月号から2007年11月号まで『月刊少年エース』に掲載された。人気作として『新世紀エヴァンゲリオン』や『多重人格探偵サイコ』が連載されていた時代だ。

この記事では作品の魅力を紹介したい。

登場人物

崔樹深小姫(さいき・みさき)……19歳。「口寄せ屋」と、SM女王の二足のわらじで生活している。「パイパンで処女のSM女王」というのをしばしばネタにされる。

『低俗霊DAYDREAM』6巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p44より『低俗霊DAYDREAM』6巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p44より

柧武惣一郎(かどたけ・そういちろう)……東京都生活対策課の職員。心霊は大の苦手。見た目によらず格闘技の使い手でもある。

『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p60より『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p60より

藤原充(ふじわら・みつる)……深小姫を慕ってつきまとっているストーカーの少年。未成年であるため、店でのプレイはお断りされてしまった。自殺サイトにそそのかされて義妹が自殺した後、首謀者のユオを1人で追っている。

井荻ユオ(いおぎ・ゆお)……長身の青年。インターネットを使って自殺志願者を集め、扇動している。数々の事件の黒幕とも言える人物。

主人公のルックスとボンデージコスチュームの魅力

なんと言っても深小姫はスタイルが良く、女王ファッションの着こなしがかっこいい!
シルバーのバサっとしたボブヘアーに、赤い目はアルビノを思わせる。時折見せるクールな表情も魅力的だ。

私服はスポーティだが、SMクラブの出勤時は露出の多いセクシーなファッション。また、口寄せ屋として仕事をするときも、コートの下はボンデージスタイルで、胸元などに特殊な縄を締めている。この縄は「鬼縫(きぬい)」と名付けられ、深小姫の命令で自在に空中を舞い、死霊を拘束する役目だ。

『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p190より『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p190より

エピソードごとに変わる深小姫のコスチュームを見るのが、楽しい。

あとは不慮の事故による「ご開帳」だとか、仕事中のハードなSMプレイ、入浴シーンなどちょっとエッチなシーンが毎回用意されている。

『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p91より『低俗霊DAYDREAM』1巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p91より

深小姫が「処女」という設定もあって、挿入シーンこそないものの、少年誌の限界に挑むギリギリのエロにドキドキしながら読んでいた。これは、ギリギリのエロだからドキドキするのであって、一部始終全部見せたら興ざめだろう。この辺りの采配が、奥瀬×目黒コンビは絶妙だった。

人情味あふれる主人公のキャラクター

例えば2巻に収録された『デイドリーム』というエピソードで、深小姫が死者に説教するシーンがある。
その死者は自殺サイトにそそのかされ、個人的な恨みから怨霊になろうとして、いわくのある森の中で死を選んだ。

「こんなことをしてもあなたが本当に復讐したいと思う相手は、今もぬくぬくと次の獲物を、弱い人間を探して生き続けている」
「あなたが傷つけたのはあなたを心から愛している人達よ。あなたは小さな柔らかい箱の中で身内を切り裂くことしかできなかった」
『低俗霊DAYDREAM』2巻 著・奥瀬サキ、目黒三吉(角川書店)p118

死者を諭し、その場を立ち去るときに、深小姫は「死人に説教なんて……」と自嘲している。
後日花を手向けに再び現場を訪れると、死者はいなくなっていた。現世での迷いを捨てて天に上がっていったと示唆される。

このように自殺をテーマとしても、いたずらに自殺を奨励するマンガではない。逆に未練を残した死者に説教をしたり、成仏を助けるエピソードの方が多い。
(これも元祖『低俗霊狩り』から踏襲された、奥瀬作品の持ち味と言える。)

都内・実在の場所を舞台としたリアリティ

連作エピソードのうち、多くが都内にある実在の場所を舞台としている。あまりにも陰惨な事件では場所をぼかして架空の設定にしているところもあるが、それ以外は土地鑑がある者にとって、生活感に密着してリアルに感じる場所ばかりだ。

『低俗霊狩り』でおなじみの井の頭公園でも、ちょっとほのぼのするエピソードが差し込まれ、古くからの読者の心をくすぐる。

  • 『首吊りマンション』……深小姫の自宅マンションは荻窪にある(1巻)
  • 『ダムゴースト』……深小姫が、1巻で知り合った女子高生を再び助けることになった場所が中野の歩道橋(2巻)
  • 『ヒルガオ』……休日の朝、二日酔いで井の頭恩師公園のベンチで目覚めた深小姫が事件と出くわす(3巻)
  • 『幽霊タクシー』……タクシーの運転手が幽霊を乗せた場所が、千葉県佐倉市にある鹿島橋付近(3巻)
  • 『幻覚』……藤原充が中退した都立高校があるのが三鷹市連雀(4巻)
  • 『橋の上の幽霊』……惣一郎が深小姫の休暇中に、他の口寄せ屋と組んで奮闘するエピソード。舞台となるのが大田区にある京和橋(4巻)
  • 『ヒゲ』……深小姫と友人のしず依(しずえ)が総武線の人身事故にまきこまれるのが、市ヶ谷駅。(6巻)
  • 『胎霊(はらたま)』……充が同棲していた女性が変死し、その後怪事件が相次いだ都営住宅の所在地が新宿区戸川。(6巻)
  • 『ウェルテル』……クライマックス、黒幕のユオが集団自殺を仕掛ける場所が羽田にある穴森稲荷神社付近の橋(10巻)

終わりに

10年も前の作品だが、古くならない良さがある。

この作品を読んで気に入った人はぜひ、『低俗霊狩り』【電子書籍】(全5巻)も読んでみて欲しい。同じパターンのほぼ連作読み切り形式で楽しめるマンガである。

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ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。