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灼熱の高層ビルに閉じ込められた受験生の恐怖を描く、関よしみ『マッド・サマースクール』

関よしみ『マッド・サマースクール』

関よしみの『マッド・サマースクール(1996年)』がリメイクされた。
作者は合田蛍冬あいだけいと、ぶんか社から完結編の4巻が発売されたばかりだ。(2019年11月26日発売)

私は原作『マッド・サマースクール』をリアルタイムで読んだ世代だ。夏休みの家族旅行に出かける際、車の乗車時間が長いので1冊マンガを買ってあげると言われ、そういうときは大抵『サスペンス&ホラー』か『ホラーM』を選ぶ小学生だった。

『マッド・サマースクール』は特におもしろく、成長した後でも時々思い出すことがあった。
もし、ビルの高層階で災難に遭ったら……?とか、有事の際、簡単に脱出できない場所でカンヅメにされるのは恐ろしい!というトラウマを私の心に根強く植えつけた作品でもある。

関先生の作品は多くが電子化されており、過去の作品も手軽に購入して読むことができる。
『マッド・サマースクール』は短編として描かれた作品で、作品集『マッドパパ』の中に収録されている。

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『マッド・サマースクール』あらすじ

受験生の祥実ひろみは久保ゼミナールの難関試験に合格し、20日間の夏合宿に参加を許された。

関よしみ『マッド・サマースクール』出典:関よしみ『マッド・サマースクール』 1996年

合宿に参加したのは、全員がT大合格を目指す受験生たち、総勢10人だ。
彼らはビルの最上階33階にある合宿所に集められ、外部への連絡や外出も制限されて、一日中勉強漬けの日々を送ることになった。

初日の深夜、落雷による事故が起き、買い出しに出かけた講師たちは全員エレベーター内に閉じ込められた。
この事故により、期せずして受験生たちは外界から隔絶されてしまう。
非常階段の出入口は施錠され、屋上に出ることもできず、33階の窓は強化ガラスになっていて破ることもできない。

出典:関よしみ『マッド・サマースクール』 1996年

ビルは断水となり、エアコンも止まった後、祥実たちは猛烈な暑さと渇きに苦しめられる。
元より勉強優先で、仲が悪かった受験生の間では残り少ない水をめぐり、争いが起きた。

出典:関よしみ『マッド・サマースクール』 1996年

3日が過ぎると、錯乱する者や自殺をする者が続出し、合宿所はパニックとなった……。

見どころ【ネタバレ】

「他人を押しのけても自分だけは勝ち上がりたい」とか「人を殺してでも自分が生き残りたい」という受験生同士の醜い争いが一番の見どころだ。

クライマックスでは大乱闘となり、棚が倒れた際に「水取りぞうさん」みたいな湿気取りが転がり出て、またも奪い合いになる。

出典:関よしみ『マッド・サマースクール』 1996年

これはギャグシーンなのか!?と戸惑いつつ、笑える場面だ。
人間の愚かしさへの風刺が効いている。

皆が争い正気を失う中で、祥実に淡い恋心を寄せ、守ろうとする浪人生の少年がいて、少女マンガらしいラブストーリー展開もあった。

私の感想

掲載当時、スマホやその他の通信手段がなかった点を除けば、ストーリーには、今でも通用するソリッド・シチュエーションホラーとしての普遍的おもしろさがある。
現在の都市部では33階を遥かに越えるタワーマンションや商業施設も当たり前の景色となり、高層階で、もし停電や火事が起こったら……?という恐怖は、すぐそこにあるリアルだ。

また、エリートをめざしながら自己の利益のみを追求する受験生らの姿には、子ども心に幻滅を感じたものだ。エリートはこうではいけない。真のエリートはこういうときにリーダーシップを取って、集団の利益を一番に考えられる人間でなくてはいけないのではないか。
今や私も大人になり、受験生目線というよりはこの子どもたちを導く大人の視点で、こうした競争一辺倒の教育に疑問を感じる。

単なるパニック・ホラーではなく社会問題として描いた、関よしみ先生の慧眼が光る作品だ。

リメイクされた新作では、人物名こそ一部共通しているものの、SF的な味付けがされ大幅にストーリーが改変されている。
原作と新作を読み比べてみると、新たに追加された人物やストーリーなど、どこが脚色されているかによって作者の意図がわかり、より楽しめると思う。

合田蛍冬あいだけいと先生の描く『マッド・サマースクール』(全4巻・完結)は、最終巻がすでに発売されており、分冊版・Kindle版も合わせて配信されている。

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ジョヴァンナ
ジョヴァンナ
ソリッド・シチュエーションホラーの女王・関よしみ先生の名作を、ぜひチェックしてみてね! 
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黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。