外薗昌也先生の実話系怪談シリーズ。高港基資先生によって描かれたマンガバージョンは『黒異本』『赤異本』『白異本』の順に単行本となっている。
この記事では、3冊目の『白異本(しろいほん)』を紹介したい。
『白異本』 原作:外薗昌也、作画:高港基資、2017年8月刊行、日本文芸社
収録話
- 黒い数珠
- うらがえし
- ヒダリウデ
- 伝言
- 不浄
- スナッフビデオ 前編
- スナッフビデオ 後編
解説
『白異本』というタイトルは忌み言葉の「白不浄」からきている。「白不浄」とは出産の穢れ(けがれ)を表す言葉だそうだ。
この単行本に収められた中で、出産に関係する話は『不浄』のみ。ほかには、子どもが関わる話が複数収録されている。
『黒い数珠』は、恨みや呪いをはね返すための数珠を身につけた一家の話。
『うらがえし』は、この世と逆のうらがえし、あの世に通じる特別な場所の話。
『ヒダリウデ』は、団地の住民調査に赴いた警察官が体験した奇妙な話。
『伝言』は、小学校にある古い木造トイレで少年の幽霊と出会った話。
『不浄』ひどいケガを負って救急外来に来た男が医師に告白した話。
『スナッフビデオ』ホラー映画マニアの青年が、見てはいけないビデオに取り憑かれてしまった話。
『白異本』はコミックシリーズの中で最も残虐なシーンが多い。また、個人的に、子どもの絡む話は特に後味が悪いと感じた。
下記に胸糞シーンを避け、少しだけ紹介したい。
エピソード紹介:『不浄』
【あらすじ】
大火傷をした男が救急外来にやってきた。男の体には日常的に虐待でもされているかのようなケガの痕が多数あり、体からはドブのような悪臭がすることを医師は不審がった。
男は製薬会社に勤めており、契約会社をまわって検体を回収し自社の研究室に運ぶのが仕事だという。
マイホームを建て、妻と双子の幼い娘2人と暮らしているが、なぜか娘たちが懐かない。それどころか食事に虫を入れたり、靴に画鋲を仕込んだり……。だんだん行動がエスカレートして、ついには大ケガをさせられてしまった。
そんな娘たちの奇行には理由があった。
サラリーマンが、なぜこうなったかと告白する内容がひどい。
愛する娘たちからの虐待に耐え、最終的に気が狂った顔で笑うサラリーマンの姿が怖かった。
コミックシリーズ全体の感想
これまでに3冊続けて記事として紹介した。
1冊目の『黒異本』では、団地など特定の「場所」に紐づいた怪異が多かった。
2冊目の『赤異本』では、凄惨な虐待によって傷つけられた人の話を多く描いている。
3冊目『白異本』はどちらかと言うと加害者の側にフォーカスして、胸糞話を描いているケースが多い。
表紙イラストの釘バットを持った女性の図柄も、そのことを暗示しているのではないだろうか……。
単行本続編も刊行!
『白異本』の続編はWEBマンガの『ゴラクマガジン』に掲載され、単行本は2019年7月9日に刊行された。こちらもなかなかに後味が悪い話が多く、おすすめだ。
- 8話 踏切(2017/11/20公開)
- 9話 工場現場(2017/12/11公開)
- 10話 水死体(2018/2/21公開)
- 11話 河童の手(2018/4/20公開)
- 12話 盆の海(2018/6/20公開)
- 13話 二年越し怪談 前編(2018/8/20公開)
- 14話 二年越し怪談 後編(2018/10/20公開)