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アート

【原画展】『伊藤潤二&オマージュ展』の感想・レポート

『伊藤潤二&オマージュ展』の感想・レポート

2019年4月18日から5月14日まで開催予定の『伊藤潤二&オマージュ展』を訪れた。
会場は渋谷区神宮前にある「ボリス雑貨店」。画家・ヒグチユウコ先生のオンリーショップだ。

ボリス雑貨店(渋谷区神宮前):外観から細部のインテリアまで凝っているボリス雑貨店(渋谷区神宮前):外観から細部のインテリアまで凝っている
ボリス雑貨店(渋谷区神宮前):赤い看板が目印ボリス雑貨店(渋谷区神宮前):赤い看板が目印

この展覧会では伊藤潤二先生の原画を始め、石黒亜矢子先生、今井昌代先生、ヒグチユウコ先生によるコラボ作品が展示され、同時にグッズが販売されている。

私は会期初日、パートナーのえむさんと共に観覧した。この記事では、展覧会の模様をレポートしたい。

展覧会概要

『伊藤潤二&オマージュ展』

  • 会場:ボリス雑貨店
  • 住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-16-2
  • 入場料:無料
  • 会期: 2019年4月18日〜5月14日
  • 時間: 11:00〜19:00
  • 定休日: 水曜日

目次

伊藤潤二【原画】展示内容

  • 妖女シリーズ……23点
  • 描き下ろし作品『ラフレシア』など……数点
  • 過去のマンガの予告カット『富江 地下室』『隣の窓』『富夫・赤いハイネック』『アイスクリームバス』『布団』など……10〜20数点

《追記》出品された予告カットの一部は、石黒先生、ヒグチ先生のツイートで紹介されている。

《追記》ところで、ヒグチ先生のツイートの中に紹介された「早く幽霊になりたい」と記された予告カット。この展示を見たときに「こんな話あったっけ?」と疑問に思い、帰宅後に調べてみた。同じタイトルの作品はないが、似たタイトルの作品として『幽霊になりたくない』(2005年)があり、サムネイルを見た限りではこちらが該当作品のようだ。
このカットは掲載時には内容が変更された幻のカットと思われ、大変レアなものではないかと思う。

感想・レポート

他のアーティストとのコラボ作品が全面に出た展覧会を想像していたが、実際には伊藤先生個人の原画がボリューム多く展示されており、それだけでもかなり見応えがあった。

特に『妖女シリーズ』は画集にも収録されておらず、初めて見るものだったので感激した。調べてみると、井上雅彦によるホラーアンソロジー『異形コレクション』の企画で、第31番目にあたる『妖女』のために描き下ろされたイラストレーションとのことである。

『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫

現在ではやや入手困難となっている『異形コレクション 妖女』の文庫本を手に取ってみると、挿画・各話の扉絵として妖女のイラストが小さく印刷されている。

『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p576『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p576

『妖女シリーズ』の原画はどれもA5〜B5程度の小さな用紙に描かれていた。
内容的には潤二先生らしいうるわしの妖女から、怪物じみたグロテスクな妖女まで幅広い作品があり、どれも『〇〇妖女』と名付けられて販売されていた。

『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p407『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p407
『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p58『異形コレクション 妖女』井上雅彦・監修、光文社文庫、2004年、p58

4月17日・18日にはプレオープンとして事前予約制で原画を販売するイベントが行われており、我々が訪れた時間帯にはすでにいくつもの原画に《売約済み》のシールが貼られていた。

なお、原画の価格は非公開となっており、買いたい人だけがスタッフに頼んで価格表を見せてもらえる仕組みだ。
(詳細は秘するが、事前に「潤二先生の原画であれば、10万円は下らないだろう……」と予想した通りの金額であった。)

マンガの予告カットではめあてにしていた『案山子』を見ることができ、うれしかった。
どちらかと言えば『ハロウィン』時代の古い作品(1990年代)が多く展示・販売されていたように思う。
予告カットも掲載サイズが小さいためか比較的小さな用紙に描かれ、トレーシングペーパーを掛け、欄外に作品タイトルなどが鉛筆で書き込まれていた。

これまでに見てきた潤二先生の原画全てに言えることだが、繊細なイラストでありながら、ホワイトで修正したり、切り貼りして紙をあてた跡がほとんど見られない。
女性の髪の流麗なラインも滑らかに筆で描いた跡が見られ、惚れ惚れとした。

今回展示された作品は、だれかが購入すれば、今後新たに出る作品集で再録される可能性はほとんどなくなってしまうだろう……。予告カットはともかくとして、『妖女シリーズ』はまとまった一連のシリーズとして、今後目にする機会がなくなってしまうのはもったいないように思った。せめて、小さい画集でもあれば欲しかった……。

と言いつつ、1作品はえむさんが購入予約したので5月下旬にはわが家にお目見えする予定だ。その日を今から楽しみにしている。

えむの感想

伊藤潤二作品をオマージュした石黒亜矢子先生の作品にはどれも可愛らしさがあふれていた。ひきずり兄弟のオマージュも各々のキャラクターを反映させたもので素晴らしかった。その中でも私が気に入ったのは「にゃういち」だ。
双一を猫に見立てた作品で、双一の含みの有りそうな目線、口に含んだ釘、五寸釘を打っている様子は絶妙なオマージュ。気に入ってTシャツを買った。

石黒亜矢子先生による「にゃういち」伊藤潤二オマージュTシャツ石黒亜矢子先生による「にゃういち」伊藤潤二オマージュTシャツ

伊藤潤二先生の原画もまた、心ときめくものだった。
予告カットは実際の作品と少し違ったりするところが興味深い。黒いジョヴァンナも書いているが、「案山子」は佇む案山子の悲哀が伝わってくる作品で、実際に原画で見られてうれしかった。
『妖女シリーズ』は何点か迷った中で熟考して、1点購入させて頂いた。次にいつ原画が販売されるのかわからないので気合を入れたのだが、しばらく節制しなければ……。
《妖女》の到着が待ちきれない。

えむTwitter: @mnb_yx

ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。