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アート

【原画展】伊藤潤二画集出版記念展「異形世界」の感想

伊藤潤二画集出版記念【原画展】「異形世界」

銀座スパンアートギャラリーにて、伊藤潤二先生の原画展が開かれた。
2019年3月に出版された潤二先生初の画集『異形世界』に収録された作品を展示するもので、2019年3月23日から4月9日まで開催されている。

私は後期の展示を初日に観覧したので感想を紹介したい。

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展覧会概要

伊藤潤二画集出版記念展「異形世界」

  • 企画:スパンアートギャラリー/協力:朝日新聞出版
  • 会場:スパンアートギャラリー
  • 入場料:無料
  • 前期: 2019年3月23日〜4月2日
  • 後期: 2019年4月4日〜4月9日(※一部入れ替えあり)
  • 時間: 11:00〜19:00(最終日は17:00まで)

目次

会場のレイアウト・物販もあり

伊藤潤二原画展『異形世界』

スパンアートギャラリーはこじんまりとしたギャラリーである。
向かって左側の壁にカラー原画、対面の壁にこれまでの著作から抜き出した肉筆原稿が展示されていた。
窓側の一角に物販コーナーが設けられ、複製原画、絵ハガキ、缶バッジ、Tシャツなどが販売されている。
私は「富江」が印刷された白いTシャツを購入した。このイラストはグロ要素がない綺麗な絵柄なので、遊びに行くときなどに着るつもりだ。ちなみにサイズはSでちょうどよかった。(女性・標準体型)

富江Tシャツ

カラーイラストの瑞々しい着彩

カラー原画は意外と小さいものが多かった。単行本の表紙絵などはほぼ原寸大。マンガの原稿と比べると、幾分小さく感じた。
『うずまき』ワイド版や『溶解教室』単行本の表紙に使われたイラストなど、横長のイラストを一続きで見られたのはうれしかった。
『ネムキ』2011年5月号の表紙のために描かれた富江は色調が明るいピンクでほんわかしており、美しい。
『トンネル奇談』もグリーンが鮮やかで良かった!

ハロウィンコミックスの表紙絵など一部懐かしいイラストも見られた。

ほとんどのカラー原画はインクや水彩を主として補助的に色鉛筆などが使われ、色同士を重ねたり滲ませることなく、元の色調を生かすクリアな描き方がされている。アクリルや油彩を見ても、画面に絵の具の厚みがなく、少しずつ色を取って薄化粧で繊細に仕上げるスタイルだ。
こってりたっぷり厚化粧しないのが潤二先生のスタイルらしい。

生原稿は圧倒的に繊細、かつグロテスク

マンガの生原稿を展示したコーナーでは、『黴(カビ)』『寒気』『隣の窓』『長い夢』『地獄の人形葬』『潰談』『長い夢』などから、特に衝撃的なシーンを抜き出して展示されていた。いずれも画集に収録されているイラストだ。
また、画集のp133〜134にコラージュとして収録された『ファッションモデル』『少年』『棺桶』『なめくじ少女』『肉色の怪』などは、トリミングされる前の原稿を見られたのが良かった。
どれもグロテスクなシーンばかりだが、緻密な描き込みと画面の躍動感に圧倒された。

単行本ではどうしても雑誌で見たより小さいサイズとなってしまうところ、生原稿は大きくて迫力がある。
また、印刷になると黒い部分は潰れてのっぺりフラットになってしまうが、肉筆原稿にはペン先の行く方向性や筆づかいのようなものが生きていた。

特に印象的だったのは、『死びとの恋わずらい』だ。
辻占いの美少年に焦がれるあまり、怪物と化した女性たちが大挙して押し寄せるシーン。群衆を包むように白い霧が発生している。黒々とした描画の上からホワイトで霧が描き込まれ、うっすら下の絵が透けていた。このホワイトは小さいスポンジのようなものを使って、ポンポンとスタンプされたような感じだ。
肉筆原稿を見ると、何度も描き込みを重ねて一つの絵が作られていることがわかる。印刷で見たときには一つの像として目に入るが、原画では、層の重なりや下の層が透けている感じを体感できるのがよい。

『死びとの恋わずらい』からは、もう1枚、全身入れ墨だらけで真っ黒になった少女の登場シーンが展示されていた。
ここは、よく見ると少女の顔を切り貼りによって描き直してあるようだ。逆に他の部分(全身の入れ墨など)に修正がなく、一発で描かれているのが凄いと感じる。ここまで緻密な絵柄を迷いなく描き切るとは……。

終わりに

今回は、特にマンガの生原稿を見られて感激した。マンガの現場は徐々にデジタル化していく一方、今後はこういう機会もめずらしくなってしまうかもしれない。

潤二作品のファンならぜひチェックして欲しい、充実した展覧会であった。

共同運営者:えむ (@mnb_yx)の感想

私は前後期どちらも観覧した。
前期の見どころはハロウィンの単行本カバーで『屋敷』『屋根裏の長い髪』などヴィヴィッドな配色が美しかった。
後期では『富江 replay』の単行本の口絵が良かった。水槽に入った富江の妖しさと背景の暗闇のコントラストに目を奪われた。
カラーの単行本カバー『路地裏』『墓標の町』はグリーンが美しかった。

前後期を通じて展示されていた生原稿は、印刷された単行本で見るのとは迫力が違う。

『地獄の人形葬』の娘、『隣の窓』の奥様など書き込みが細かい作品はその精密さに驚く。
『潰談』のヤスミンが潰れるコマを生で見ると、まさに潰された!と思うようなスピード感を感じた。

原画を見ると線の緻密さや配色の美しさがより感じられ、潤二先生の絵の素晴らしさを再認識した。

ちなみに販売していたグッズはほぼ全て購入した!

えむ
えむ
注文した複製画『放射状輪廻』が届くのが楽しみ!
ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。