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怪談

【怪談】姫だるま

【怪談】姫だるま

高校二年生の夏休み。一人で特急に乗ってばあちゃんの家に遊びに行った。
ばあちゃんは一人暮らし。山あいで農業をやって細々と暮らしている。早起きで働き者のばあちゃんに対して、土などいじったこともない私は家事を手伝う他は何もしない。
昼は部屋に引きこもって本を読み、夜は遅くまで居間にいてテレビを観た。

ばあちゃんはお土産にもらった民芸品や絵手紙を飾るのが趣味で、家中いろんなものが飾られていた。片付けが苦手なばあちゃんのこと、どれもうっすらと埃をかぶっている。
人の形したものはなんとなく魂が宿っているような気がして、子どもの頃から怖かった。
特に怖いのがガラスケースに入った「姫だるま」で、居間の入り口にあるタンスの上に安置され、男女のペアが揃ってこちらを向いている。
形はだるまだが、お顔はひな人形のようにリアルで目がぱっちりと美しい顔立ちをしているので余計に怖かった。

田舎の家は広く、居間は煌々と電気をつけていても台所や廊下や、隣の応接間は暗いのだ。ばあちゃんは二階で休んでおり、一階はシーンと静まりかえっている。そんな中、姫だるまの対がこちらを向いていると、見つめられているようで居心地が悪かった。
夜一人でいるときはなるべくそちらを見ないようにしていたし、明かりを消して二階に上がるときも、人形からは目をそらして通るようにしていた。

「ばあちゃん、茶の間の入り口にあるダルマの人形さ、どこで買ったの?」
「あれはね、テレビを買った時に電器屋さんがくれたんだよ」
「貰い物だったんだ。あれ、わざと斜めを向くようにしてこっちに向けてあるでしょう。夜見ると、怖いんだよね」
「あれはこっちを向けてるんじゃないの。おばあちゃん、いつもガラスを拭いた後まっすぐにしておくんだけどね、知らないうちに二つ揃ってだんだん斜めを向くのよ」

ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。