
2017年11月3日公開の映画『IT』を観てきた。
映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』オフィシャルサイト
スティーヴン・キングは近年映像化ラッシュでうれしい限りだ。
目次
作品概要
簡単にまとめると、主人公ら少年グループが遭遇したブギーマン(殺人鬼)が、大人になってから再び甦ったので、仲間を集めて退治する話だ。
『IT』の場合、殺人鬼の正体は地下道に潜む人食いピエロ「ペニーワイズ」である。赤い風船を持って子どもをさらい、27年周期で街にあらわれることになっている。
作品は、少年時代と27年後・成長して大人になった部に分かれている。今回のリメイク版は前編として、少年時代の第一部のみが映像化された。
前回は1990年にテレビドラマとして映像化された作品。ちょうど27年後の2017年のリバイバルである。
ピエロがなんとなく不気味なものとして感じられるのは、有名なシリアルキラー事件の記憶もあると思うけど、主には『IT』の効果ではないか。この作品は、現在活躍するクリエイターたちにも影響をあたえているはずだ。
ザックリした感想
ショッキングなシーンの連続
公開から一週後のレイトショーに観に行ったら、小さめの劇場だったが、ほとんど埋まっていた。
ジャンルとしては、CGを駆使したショッキングホラーの一言。
80年代を再現したレトロな景色に、なめらかなCGが不釣り合いだった。ゲームなどでグラフィックを見慣れている世代にとってはこれが自然なのか?
映画の『サイレントヒル』に近い感覚で鑑賞した。
暗がりから不気味なピエロが現れては、牙を剥き出しにして襲ってくる連続で、ワンパターンなのに毎回劇場のイスで恥ずかしいほどビクンと跳ねてしまった。
心臓に悪い。だが、それが良い……!
最も恐ろしいものって何だ?
主人公の少年グループは総勢7名。殺人ピエロはそれぞれにとって最も恐ろしいものに化けて襲いかかってくる。
- どもりのビル:行方不明になった弟
- 太っちょのベン:過去の事故で死んだ子どもたち
- 紅一点のベヴァリー:経血みたいなドロドロした血
- ラビの息子スタンリー:モジリアニ風の絵の中の女
- 黒人のマイク:火事で亡くした両親
- お喋りなリッチー:なし →(続編にて、きこりの人形ポール・バニヤン)
- 過保護なママを持つエディ:不潔な場所や病人
個々に見ていくと、家族的な背景を持つものが多い。少年期には家族が全世界ってことか……。
リッチーだけは背景が描かれず、2019年に公開のパート2に持ち越された。なぜ、リッチーだけ……?
ツッコミどころ
キャストが、鼻先が尖った細面タイプに偏っていた。制作者の好みなのか、ほぼ全員が同じタイプ。ハイファッションのモデルでも務めるような子どもらが、80年代の街を走り回っているのはおかしかった。
敵対する不良グループの描写も独特だった。
モデルのようなすらっとした少年が揃っていて「おいおい、自分より体の小さいお子様をいじめるなんて、卑怯じゃないか!」と内心でツッコミながら観ていた。
しかも、肥満体の男の子に「おっぱいおっぱい」言いながら寄ってたかって脱がせて、お腹にナイフで「俺の名前を刻んでやる」って……。いじめに交えて性衝動をぶつけてくるやつ、気持ち悪い。
ベヴァリーのファッションが想像よりビッチ風で驚いた。今だったら10代の化粧も胸の空いた服装も普通だろうけど、80年代の中学生でこの感じはありなんだろうか……。
恐怖を視覚化すると、どうなるか
ペニーワイズが歯を剥き出しにして襲ってくるのは、現代風の演出かなぁと思った。
目的不明のままピエロに連れ去られる恐怖や、ぽつんと取り残された風船の寂しさなど、『IT』は意味不明でシュールなところが怖いと思ってたが、今回の映画では、ほぼ全てが説明可能なものとして視覚化されていた。
急に大きな音を出したり巨大化して襲いかかってきたりして、ひたすら物理攻撃で攻めてくる感じ。単調と言えば単調。
決めゼリフの「一緒に浮かぼうよ」は、命なきものとして現実を超越した世界に誘う象徴だったわけだが、結末では、本当に宙に浮かんでいて度肝を抜かれた。
井戸の底の吹き抜けになった空間で、暗がりに殺された子どもたちが宙に浮かんでぐるぐる回るメリーゴーラウンドのようなシーン。この映像は凄いなと思った。
キングらしい、印象に残る美しい青春シーンもいくらかあった。
作品としての満足度はパーフェクトではないけれども、それなりに楽しめる良い作品だった。
ファンとしては、もう一度旧作も見直して比べてみたい。