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サスペンス

平山夢明:最恐のこわい話『峠で壊れて』

平山夢明:最恐のこわい話『峠で壊れて』

平山夢明の怪談と出会ったのは10年ほど前。蝶をあしらった表紙の『「超」怖い話』シリーズ(竹書房文庫)が最初だった。当時よく売れたらしく、コンビニの新刊コーナーに並んでいた。

そこから新刊が出るたび貪り読み、『東京伝説』を買い揃え、『怖い本』も全て集めた。怖い話が好きな癖に読んだ後は部屋に置いておくのが怖くて怖くて……。上京するときに全部処分してしまった。
今回記事にするために再度集めて読了したので、紹介したい。

『東京伝説』の怖さ

『東京伝説』が扱うのは心霊や怪奇現象ではない。「人の凶行が怖い」話ばかりだ。それも実話という体。多くは若い女性がとんでもない目に遭っている。

東京に出てくるにあたって、私の心のバイブルとなった。
理不尽な通り魔に遭いたくないから、夜道は気をつける。周囲に目を配り建物に入るときは人とかち合わないようにするし、オートロックから自分の部屋にたどり着くまで、決して気は抜かない。部屋の窓は破られないように防犯ガラスが入っているところ。鍵はディンプルキーで入居時にピカピカの新しいものをつけてもらう。容易に切られてしまうドアチェーンではなく、ドアガードがついている物件を選ぶ。ドアスコープはのぞかれないように蓋をつけるし、予告なしの訪問者にドアを開けて対応することはない。
そこまでしないと、安心できない。都会は怖い。

『峠で壊れて』

そんな私が最も怖かったのが、やはり『東京伝説』のような話。ベストオブベストは英知文庫『いま、殺りにゆきます』収録の『峠で壊れて』という話だ。

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あらすじ

ある女性が彼氏と深夜のドライブに出かけたときの話。

峠道で、二人はカーブを曲がりきれずにガードレールを破って林の中に落ち込んでしまう。彼は運転席に挟まっており、携帯電話も圏外だったので彼女が助けを呼びに行くことにした。

霧雨の中、誰もいない山道を下りて行くと、スモールライトだけを点したバンが停車していた。
運転席には人影がなく、ドアを開くと二列のシートの奥の座席に若い女性の姿が見えた。
「ごめんなさい。車が故障しちゃって……助けて欲しいの」
眠っているかのように見えた女性の体に触れると、冷たかった。

枝を踏む音が聞こえ、彼女はとっさに後部座席のシートの下の空間に隠れた。新たな死体と共に男が二人乗ってきた。
彼女を乗せたまま車は発進した。

すぐ側に男が座っていて、死体を足でドンドン蹴っている。彼女は叫び出しそうになるのを必死にこらえ、ポケットの中にある携帯で彼にメールをした。
〈たすけて。へんなおとこのばんにのっちゃった。ひとがしんでる。ふたりも〉
〈どうしてそんなことに。どこにいるの〉
〈わかんない〉
〈どんな男?〉
〈しらない。みてない〉
〈どこにいるの〉
〈ぜんぜんわかんない。たすけて〉

「だから、この車のどこにいるんだよ! おまえ」
シートの上から男の声がして、バンが急停車した。目の前の死体が転がると、彼だった。
彼女は全力で後部ドアを蹴り上げ、車外に転がり出た。クラクションの音がして、後続の車に轢かれ彼女は助かった。

バンは走り去り、今も見つかっていない。

解説

この話の怖いところは、助けを求めて彼にメールしたのに、彼は殺されて自分の目の前にいたとわかるところ。私は初めて読んだとき意味がわからず、死人からメールが来たのかと思った。しかし、そうではない。
死体を運んできた男が彼の携帯を使って彼になりすまし、やり取りしていたのだ。彼女が車内に潜んでいると知り、位置を探ろうとしていた。間一髪だった。

顔を見ていないのも幸いだった。
そのことを相手も知っているから、彼女は無事で済んだのだ。見ていたら、ただではおかない。携帯番号などの情報は握られているのだから、後から調べて始末しにきただろう。

夜道で女性の死体を車に残し、男たちが何をしていたのか考えるのも怖い。彼はなぜ殺され、連れ去られたのか。なにかを見てしまったからか。
謎を残しているのが、余計に怖い。

おすすめ度ナンバーワン

『いま、殺りにゆきます』は『東京伝説』に連なる都市伝説系の話だ。
表紙に「実話恐怖譚」と書いてある。私が思うに、実話半分・脚色半分ぐらいの割合ではないだろうか。

粒ぞろいで短い話を集めた本が2冊出ており、入門編としてもちょうどいい。『東京伝説』シリーズを読み終えた人が次に読むのにもいいだろう。
版元がなくなってしまったため、どこかで復刊してもらえるといいのになと思う。(中古書店、amazonマーケットプレイスなどで購入可能)

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『いまやり』は映画にもなっており、動画配信サイトやAmazonビデオで観ることができる。
amazonのレビューでは酷評されていたが、私は震えながら観た。特に映画オリジナルと思われるエピソード『やあ、カタオカ!』は出色の怖さだ。こんな理不尽な話って、ある!?

おそらく男性と女性では、見ている世界が違うからでは? 私にとって、映画に登場する女性たちはいつ自分の身に置き換わってもおかしくない、リアルな危険を感じる。女性にこそぜひ見てほしい。そして、こういう怖い目に遭わないように自衛してほしい。私もそうするから。

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ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。