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サスペンス

ピンポーン、真夜中にインターフォンが鳴った【鳥肌】

真夜中の訪問者

深夜0時過ぎ。インターフォンが鳴った。
見ると《オートロック》ではなく《玄関》の表示が点灯していた。
ーーこんな夜更けに訪ねてくるような知り合いはいない。しかも、玄関先に直にやって来るなんて。

鍵が締まっていることを確認して、のぞき穴の蓋をそーっとスライドさせた。
ロングヘアの小柄な女性の姿が見えた。
映画『トリハダ』の女優を思い出してぞっとした。
静かにチェーンをかけ、二つ目の鍵もかけた。息を潜めて部屋に戻ろうとした。

「ピンポーン」
ふたたびインターフォンが鳴った。


「……はい」
インターフォン越しに応対した。

「あの、さっき入り口で鍵を拾って……。鍵に102って書いてあるんですけど、落としませんでしたが?」
自宅の鍵は全部で3本。
さっき
帰宅するとき使ったものはテーブルの上に置いてある。チェストの上のキーケースにもう1本。最後の1本は実家に預けている。

「その鍵は、どちらにあったんですか?」
「さっき帰ったら、オートロックの玄関のところに落ちていて……。鍵に102って書いてあったので、ちがいますか?」
「鍵に部屋番号を書いたりはしないですし、ここに全部揃っているので私のものではありません。元の場所に戻されるか、管理人室に届けた方がいいですよ」
「そうですか。申し訳ありません」
「いえ……

「どうもご親切に」ぐらい添えたらよかったかもしれないが、深夜の訪問に警戒してつっけんどんになってしまった。
相手が女性だからと油断はできない。物陰に男が隠れているかもしれないし、そもそも、こんな夜更けに一人で知らない家を訪れようとするなんて、普通では考えられない。
もし善意の人だったとして、鍵が罠だったら、どうする?
遮音性の高いマンションなのだ。部屋に引きずりこまれたら、泣こうが喚こうがもうわからない。

翌日、管理会社に電話して事情を説明した。
「もし管理室に鍵が届いたら、こちらに連絡してもらえますか? いたずらだったのか、なんだったのか知りたいので……。それと、今後こういうことがないように落とし物を拾った場合は管理人室に届けるよう周知してください。知らない人に、急に玄関に来られても困ります」
管理会社は約束を守り、エレベーターホールに落とし物についての掲示を出してくれたが、その後電話がかかってくることはなかった。

一週間ほどして、出かけるときに管理人を見かけたので聞いてみた。
「最近、鍵の落とし物が届きませんでしたか? 102って書いてある鍵です」

「いいえ、届いてません」

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ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。