小説

吉本ばなな『吹上奇譚』第1話、2話 あらすじ・感想

吉本ばなな『吹上奇譚』

私は10代の頃から作家・吉本ばななのファンで、全小説を読んでいる。

『吹上奇譚』は2017年10月に第1話が、2019年1月に第2話が刊行された最新の小説シリーズだ。
このペースだと続きが出るのはまた1年後だろう。たぶんその頃には前の話をすっかり忘れている可能性があるので、ここに自分用のメモとしてざっくりとまとめておきたい。

created by Rinker
¥1,180
(2019/04/24 20:23:01時点 Amazon調べ-詳細)

created by Rinker
¥1,620
(2019/04/24 20:23:01時点 Amazon調べ-詳細)

登場人物(一部ネタバレあり)

  • コダマ ミミ(主人公)……交通事故で父を亡くし、母は事故をきっかけに「眠り病」という風土病にかかって病院で眠り続けている。ふたごの妹・こだちと共に母の弟夫婦に引き取られ、成長した。ボーイッシュな服装を好み、そばかすがあり、すっぴん、おかっぱ頭。東京でフリーターをしていた。『夢見』と『屍人使い』の才能を持つ。
  • こだち……ミミのふたごの妹。丸顔で、小さな可愛らしい目をしている。ミミより背が低く、男性にもてるタイプ。洋裁とデザインを仕事にし、東京のアパートでミミと暮らしていた。力が強く、テレパシー能力がある。
  • コダマ夫妻……ミミとこだちの叔父夫婦(ということになっている。)吹上町で人気のあるアイスクリーム店を営む。
  • 「虹の家」の姉妹……吹上町で占いをなりわいにしている。豪華な屋敷に住み、訪れた人々から鑑定料を取る代わりにお告げと祈りをささげる。
  • 墓守くん……吹上町の墓場でボランティアで清掃などをしている。祖母が台湾人で吹上町で長く台湾料理の店を営んでいた。父親はアメリカ人実業家でハワイにいる。母は父の愛人で「眠り病」にかかり、最近になって亡くなった。祖父母から受け継いだアパートの家賃収入で細々と暮らしている。長年付き合っている恋人がアパートの別室で暮らす。
  • ……吹上町の大地主・カナアマ家の当主。町外れの森の中の城に暮らしている。50歳。熊のように大きく毛深い、変わった外見をしている。首元にかけたペンダント型の翻訳機を通して話す。家族はブルドックが1匹、名前はマーセリン。
  • 美鈴……墓守くんの恋人でアパートの1階に住む。霊能力者。身なりに構わないが美人。
  • 都築くん……東京・麻布で大金持ちの女性と暮らす芸術家。ボクシングジムに通っていた頃、受付のアルバイトをしていたミミと出会い、セックスフレンドとなった。

第1話 ミミとこだち・あらすじ

東京で暮らしていたミミの妹・こだちは、故郷で入院している母の見舞いに行くと言って、ぷっつりと姿を消してしまった。ミミはこだちの行方を探すため、故郷・吹上町にある「虹の家」を訪れる。
「虹の家」の姉妹は、こだちが特別な能力を持っており「眠り病」にかかった母親を目覚めさせるためにいなくなったのだと伝える。吹上町は昔異世界と通じており、死んだ人の体を異世界に送って、家畜のように使役していたらしい。今もその名残で、町外れを屍人が徘徊していることがある。

ミミはこだちの帰りを待つため、吹上町に止まり、「墓守くん」やカナアマ家の当主・勇と知り合った。

第2話 どんぶり・あらすじ

第1話で戻ってきたこだちは勇と結婚することになり、カナアマ家の城で暮らすことになった。姉妹の母も目覚めて、リハビリがてらカナアマ家の別棟に暮らし、食事をつくることに。母は特にコダマさんの奥さんが作ってくれたどんぶりを気に入り、どんぶりもの作りに没頭していた。

ミミは墓守くんの手伝いをしながら、ぶらぶらしていた。墓守くんの恋人・美鈴とも仲良くなろうとしていたが、ある日、美鈴は仕事の除霊に失敗して、少女の霊に取り憑かれてしまう。

私の感想

ばななさんが初めて書いたファンタジー。(あれ、いつものやつはファンタジーじゃなかったのか……!)
ここまであからさまに超常現象とか、異世界とか、ゾンビがうろうろしているという意味では、確かにファンタジーと言える。
「ホラー」とも銘打っているが、暗い話・血なまぐさい話は少ない。主人公のミミが若いのと(18〜20くらいか)のほほんとした性格ゆえに、何が起こっても暗くはならない。ミミの語りによって、ほのぼのとしたおとぎ話のような調子で物語は進んでいく。

1話で私がおもしろいと思ったのは、ミミが「虹の家」で占いを聞いたところ。
「虹の家」の姉妹がミミに対して、現状維持で静かに暮らしたいというのはあなたの本当の望みではない。「あなたはほんとうは人生をもっと明るく燃やしたい、日々なにかを革新して新鮮に生きたい、そんな人なのです」と指摘する。家族の問題に巻き込まれ、妹を失うかもしれない恐怖にとらわれて、今はそういう気力が起こらないだけなのだと。
ミミに限らず、そういうことってよくありそうだな〜と思った。不安、心配で心をいっぱいにしていると、本来のキャラクターの良い部分や、持ち味を充分に発揮できないことってある。こういうところは、いつものばななさんの小説と同じように寓話として読める。

1話では登場人物の紹介や舞台設定の説明にページを割いているところが多く、物語の進みはゆっくりだ。2話の方が事件らしい事件があって、より楽しめる。

私の予想では、毎回幽霊とかホラーな事件があって、登場人物がそれぞれ絡んで解決され、ミミと墓守くん・美鈴の三角関係がより深まっていくのかなと……。
墓守くんと美鈴の関係がガッチリ深いので、そこにミミが入り込んで子どもまで作る展開には到底なりそうな感じがしないけど、『王国』のときもそうだったんだよな〜。(主人公がいつのまにかゲイカップルの片割れと子どもを作っていて、びっくり。)
このへんは著者の「結婚観」を反映していそうである。夫婦の絆とか従来の結婚制度に縛られず、自由にファミリーを形成してみんなで子どもを育てたいという、ばななさんの理想像なんじゃないかな。

第3話「ざしきわらし」は2010年に読めるはず。これも、出たら必ず読む!

created by Rinker
¥1,180
(2019/04/24 20:23:01時点 Amazon調べ-詳細)

created by Rinker
¥1,620
(2019/04/24 20:23:01時点 Amazon調べ-詳細)

ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。