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NHK『声優×怪談』〜高港基資『恐之本』より原作紹介〜

NHK『声優×怪談』〜高港基資『恐之本』より原作紹介〜

2019年8月14日、15日の2夜連続でNHK『声優×怪談』が放送される。豪華声優陣が5分ずつ、12本の怪談を朗読する怪談番組だ。

そのうち、3話が私の大好きな高港基資たかみなともとすけ『恐之本』きょうのほんシリーズから採用されたので紹介したい。

警告:この先、ネタバレ注意!

『轢いた女』

出典:高港基資『恐之本 お七』2015年、少年画報社

ある晩「俺」は不注意で、女性を轢いてしまった。
被害者の女性は、救助を待つ間身の上話をしていた。今は派遣社員だが、もうすぐ正式採用してもらえそうなこと、会社や婚約者に心配かけたくないこと。そのうち女性は意識を失い、亡くなった。轢かれた時に下半身を失っていたのだ。
「俺」はケガで入院することとなったが、自分が起こした事故で女性を死なせたことを深く悔やんでいた。

病室には亡くなった女性の上半身が現れ、暗い顔でうめき声をあげた。

出典:高港基資『恐之本 お七』2015年、少年画報社

「俺」は、女性の婚約者に会いに行くことにした。
意外なことに、男は、彼女は大勢いる遊び相手の一人で、婚約した覚えはないと言い、「あの子は家族も誰もいない。賠償する相手がいなくて、あんたラッキーだったな」と笑った。

「俺」は、日に日に衰弱した。
そこに先日会った男がやって来て、慰謝料を要求した。ヘラヘラ笑いながら「遊びのつもりだった」と言うのを女性は悲痛な表情で聞いていた。そして男が立ち去ると同時に彼女も消えた。
その直後、エレベーターの事故で男は亡くなった。扉に挟まれ、下半身が切断されていた。防犯カメラには一瞬だけ、女性の姿が写っていたという。

少年画報社:『恐之本 お七』所収

人を轢いてしまって恨まれる話……と思いきや、矛先があさっての方向に向かい、驚かされる。加害者の青年が法により罰せられ、反省していることだけが救いだ。
衝撃的な事故のビジュアルと、怨霊と化した女性の顔が怖い。

『元カノ』

OLの「私」はSNSで日記を公開していた。つながりがある人同士、コメントし合ったり閲覧履歴をたどるのを楽しみにしていた。
そんな中に、一人、不審な人物がいた。「怜子」といって、プロフィールも日記も何もないのだが、深夜に「私」のページを見にくるのを日課として一年以上も続けている人物だ。

出典:高港基資『恐之本 参』2013年、少年画報社

「私」は薄気味悪く感じたが、実害がないので放置していた。

ある日、恋人のあきらからプロポーズされ、喜びの日記をSNS上に公開すると、怜子から初のコメントが届いた。「死ね死ね死ね……」と、無数の「死ね」でコメント欄が埋め尽くされた。

怜子は滉の元カノで、メンヘラをこじらせ、滉と別れた後自殺したらしい。
二人はお祓いをした。
滉が持参した写真の中で玲子の顔だけが歪んでいたが、お祓いの後は元の顔に戻っていた。
以後、「私」の日記を玲子が見にくることもなくなった。

少年画報社:『恐之本 参』所収

少し前に流行した「ミクシィ」をテーマにした怪談。
死んだはずの女に監視されており、彼女の霊が実体を現すところも怖いが、一番怖いのは、滉が持って来た写真が心霊写真となっているところだ。
結末では写真の中の彼女の表情が穏やかになり、ちょっといい話として終わっている。

『最期の夢』

「私」のひ孫・桜が「兵隊さん」の姿を見るようになった。
「私」には若い頃、戦争で南方のジャングルに行き、毎日何十人もの戦友が死んでいくのを見送った経験がある。
「いつか来ると思ったが、あれらの幽霊を見たことはない。幽霊はいないんだよ」と言って、なんとか桜を納得させようとした。しかし、そう言う「私」も、今頃になって日本兵の幻影を見るようになる。

出典:高港基資『恐之本 四』2014年、少年画報社

1か月後。「私」は衰弱し床に伏せっていた。
血だらけの日本兵に囲まれ、「お迎えが来たか」と思ったのもつかの間、ジャングルで全身を負傷した姿で目を覚ました。
生きて日本に還り、結婚したことも、子どもやひ孫ができたことも、全て「私」の夢の中の出来事だったのだ……。

一方、ひ孫の桜は「あたし、ひいおじいちゃんとよく会うよ」と、ニコッと笑った。

出典:高港基資『恐之本 四』2014年、少年画報社

少年画報社:『恐之本 四』所収

長い長い人生が、たった一瞬で見た夢に過ぎなかった……という「胡蝶の夢」をモチーフとした作品。『恐之本』には珍しいハートウォーミング回となっている。

『恐之本』は10巻まで発売中

『恐之本』は高港基資先生が『読者投稿心霊体験』に執筆した恐怖怪談を単行本にまとめたものだ。少年画報社より全10巻が刊行されている。

『読者投稿心霊体験』と言いつつ、創作が主体だ。胸糞や怨念系の話が多いが、作者曰く「障りがあったという話は今まで聞いたことがないし、ないはず」とのこと。その点は安心して読むことができる。
ただし、ビジュアルは相当にショッキングなので、心臓が弱い人にはおすすめしない。

単行本は、普通の1巻、2巻……ではなく、壱、弐……六つなど、ちょっと変則的な巻数表記となっていること、ショッキングな表紙イラスト、コントラストを逆転させた鮮やかな配色の装丁が特徴だ。1冊読むと、次々に読みたくなる中毒性がある。

『声優×怪談』番組情報

朗読はそれぞれ、

  • 轢いた女……池田秀一(第1夜・赤の怪談)
  • 元カノ……緒方恵美(第1夜・赤の怪談)
  • 最期の夢……池田秀一(第2夜・黒の怪談)

が担当された。
オンエアを見るのが楽しみだ。


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黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。