怪談

『事故物件怪談 恐い間取り』を読む

『事故物件怪談 恐い間取り』を読む

同居人が「外薗昌也先生がこれを読めって!」と言うのでスマホをのぞいたら、この本がシェアされていた。
「何これ、おもしろそう!」
Amazonで購入しようとしたら、売り切れ入荷待ち。ますますそそられ、本屋をあちこちまわってやっとこさ手に入れた。

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「事故物件住みます芸人」の看板を掲げる松原タニシが、2018年7月に出版した初の単行本。

8月8日の時点では第10刷だという。怪談本としては異例のヒットではないか。
なんでも、CS放送に『北野誠のおまえら行くな』という番組があって、番組の企画で2012年から事故物件に住み始め、自宅でテレビカメラをまわすという手法で人気を博しているそうだ。

前半では著書がこれまでに住んだ事故物件の間取りと、いわく話を紹介し、後半では著者の知人や怪談ライブなどで出会ったファンから集めた事故物件の概要を紹介している。全話に間取りや地図など、位置関係がわかるイラストを挟んでいるのが特徴である。斬新でおもしろいコンセプトだ。

松原タニシが住んだ事故物件

著者がこれまでに住んだ事故物件は6軒。

  1. 1R10帖。マンションの4階で「殺人・放火」があり、マンション全体が事故物件となってしまった。家賃45,000円。
  2. 2DK、「殺人」があった部屋。家賃26,000円。
  3. 1K6帖ロフト付、「自殺」があった部屋。家賃35,000円。
  4. 1K6帖、「事故死」があった部屋。家賃27,000円。
  5. 3DK、「自殺」があった部屋。30,000円。
  6. 1K10帖、家賃60,000円。

1〜3軒目までは大阪界隈。4軒目からは東京での仕事が増えてきたこともあって、関東にも部屋を借りることとし千葉だったそうだ。
「事故物件なら安いから、西と東で2部屋借りてしまおう」という発想がなんともユニーク。5軒目は契約時に「絶対に場所を明かさない」という念書を提出しており、関西とだけ記されている。
6軒目は東京都心、山手線内。

感想

正直な感想を言うと、前半はこれと言った怪異はなく、怪談慣れした私には「こんなもんか」という内容だった。

殺人があった部屋は実際に住んでどうかというよりも、その「いわく」を知るのがこわい。松原氏が住んだ2軒とも大々的に報道された事件で、ちょっと検索すればすぐにどこかわかってしまう。本文ではさらりとしか触れられていないため、私は興味本位で調べてしまい、事件のあらましを知ってイヤな気持ちになった。
実際に人が亡くなっている、しかも、自然な亡くなり方ではなく「殺人」によって、というのは内容を知ってしまうとこわい。

1軒目は事件の後で違法建築が発覚し、違法に作られた8〜10階が閉鎖されているそうだ。さらに、なぜか事件と関係ないはずの1階がぶち抜かれて広い駐輪場になっているという。それも不可解だ。
私は間取り図より、むしろ時々挿入されている写真の方がこわかった。
「ここにロープをかけて、前の住人が自殺したようです」なんて解説と共に写真が突然あらわれるので、読んでいてぎょっとした。

本の後半は人から聞いた話や、松原氏があちこち取材に行った先で泊まったホテルでの怪異などが紹介されている。どちらかと言うと、後半部の方が「怪談」として完成されており、こわかった。

終盤p240からの『黒い人』では、イベントでお客さん一人一人と記念撮影をした時のエピソード。ところどころで「ぎゃっ」という声が上がり、話を聞いてみるとその人たちの写真に写る松原氏の顔だけが真っ黒に写っていたそうだ。

ラジオで日蓮宗蓮久寺の住職である「怪談和尚」の三木大雲住職に写真を見せると、「タニシさん、五年もたないですね」と言われ、脅かされたとか。「あと五年で死ぬのではなく、死ぬより辛い目にあう」と宣告されたらしい。
その写真も堂々と掲載されており、本当に、松原氏の顔だけが真っ黒に写っているので驚いた。「隣の人の陰になっているから暗い」というレベルではない。他の陰になっている人と比べても不自然に松原氏の顔だけが塗りつぶされたように黒くなっている。

こうしたリアルな写真や、間取り図を挿入することによって臨場感を高め、「実際に遭遇した出来事」であることを強調する手法は新しいと思った。うそくさい「心霊写真」などとは違うインパクトがある。

本の評価

ソフトカバーで定価1,400円。これでつまらなければ「お金を返せ」と言いたくなるところだが、この本にはそんな心配はない。
厚みもずっしりしているし、内容がしっかりしていて臨場感がある。
ちょっとひねた怪談好きにもおすすめできる、おもしろい本だった。

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ABOUT ME
黒いジョヴァンナ
黒いジョヴァンナ
生来のホラーマニアで、学生時代には『新耳袋』『怖い本』『東京伝説』などを集め読破した。漫画好き、映画好きでもある。